土砂降り

食事が喉を通らない。 比喩でも誇張でもない。事実と現状である。


あまりにも絶望感と死の希求が酷いので、何の考えも持たずに外へ出てみる。 「死ぬ前に何かおいしいものが食べたい」 「歩いたら希死念慮が和らぐかもしれない」 「家族は助けにならないと割り切って私自身を私が生かす道がないか」 そんな事を考えながら近所のコンビニへ向かった。

アイスや菓子を買って食べたが、さほどおいしいとは感じなかった。 美味だとも不味いとも思わず咀嚼して食べた。 (所詮コンビニの菓子だからたかが知れている、というわけではなく、私の味覚が麻痺している為だ。)

歩いたり、体を動かす事は、精神疾患の治療として有効であるらしいし、 実際軽い運動をする事で、比較的気分が良くなる事もあった。

だが今回はまるでだめだ。

たった数日だか数週間だか前、この同じ道を父と共に歩いて、景色や樹木の話などをしていたのだ。

あまりにもかけ離れた現在。 他の人の目には見えない真っ黒な絶望の雨が土砂降りで私の背中を殴り叩きつけているような気になった。 道端に咲いている石蕗の花を千切って無茶苦茶に踏み荒らしてやりたい衝動に駆られる。 そんな事をしても悲しみが増すだけなのでしない。 石蕗の花は変わらずに咲いて枯れているのに、 私の中の希望は潰えてしまった。

死刑宣告を受けた虜囚のようだ。 退院まであと6日。 あと6日で家に帰らねばならない。 (この感覚。死刑宣告のようだ。)